ミヅキの冒険~Adventure diary~

今、旅立ちの時。

プロローグ

―旅立ちの時― 桜が見える 月が見える 呼吸も忘れ それだけを見ている 沈む感覚もなく 浮く感覚もない 聴こえるのは 規則正しく鳴る奇妙な音 水面に落ちる 桜の花びらの音 もはや泣き声さえ 聴こえない 落とされる暖かさも 一瞬のうちに消えていく その視界が…

第1章 1話

―冒険日記の始まりに過ぎない― エキスパの森にて Adventure diary。 17歳の私、ミヅキがこれから“旅立ち”で経験したことを記録していくであろう、冒険日記。それがあわよくば時を越えて他の人の手に渡り、繋がる冒険の続きを書いてくれる人がいればいいな…

第1章 2話

―人生色々服も色々― 元祖 東風屋にて PM1:00 食器を洗っていたら今日やるべきことを思い出した。“旅立ち”のための服を取りに行かなくては。急いでお皿洗いを済ませ、ブティック ヴェント・エストに向かう。大きな服の看板を掲げたお店に入ると……あれ? 「ソ…

第1章 3話

―今日も元気に営業中― イースト・ウィンドにて PM 3:50 「しょうがないからお母さんが代わりに立ってたけど、次からはやらないからね?」 「すみませんでした……」 「お母さんも他の仕事があるんだから」 怒られながら私は箒で店の前を掃いている。 ハテノ牧…

第1章 4話

―101匹ガンバリバッタ― 「お前、何か心当たりあんのか? おいおいさっさと吐くんだ」 そう言ってタデさんは畑のフォークの持ち手のほうを私の肩にコンコン、と当てた。その特徴はもうあの人しかいない。だけど。 「タデさん、村の一番奥の建物にいる人の…

第1章 5話

―回避ジャストの代替案― PM 9:00 この時間になるとハテノ村の大人たちも寝る支度を始める。桶を片付けたころにはもう大通りに人はいなかった。 私も早く寝て、いつも通り朝6時にシカ狩りに行かなければならない。早寝早起きはシカ狩り常連の掟である……と思…

第1章 6話

―知恵得しもの― 私は満身創痍の状態になっていた。 軽く当てようとした剣を私の壊滅的な剣捌きで逆に振り上げてしまい、コッコが悲痛な鳴き声をあげたことでその仲間たちが集まって全身傷だらけに……という経緯である。喰らっている最中ずっと謝り倒していた…

第1章 7話

―光陰の斥力― ハテノ古代研究所にて AM11:00 ハテノ牧場前、少し急になってきた坂に立てられている看板にはこう書かれている。「あぶないよ? いい子のみんなは来ちゃダメ」。所長の子供嫌いが透けて見えるようで、見慣れているのにクスッと笑ってしまう私が…

第1章 8話

―繋がる冒険― PM2:30 木製の階段を降りていくと、その先にプルアさんとシモンさんが見えた。心配そうな表情を浮かべながら私を見上げている。 「ミヅキ、大丈夫?」 「激しい口論が聞こえたのですが……」 安心させるようににっこり笑って、リズミカルに階段を…

第1章 9話

―月光の守護者― 師匠はおもむろに立ち上がり、階段下の倉庫に向かった。ものの数分で返ってきたその両手には、鞘が大きな曲線を描いた剣が握られている。テーブルに置かれると金属的な音がした。 「1人では危険だ。これを授けよう」 師匠は呟き、慎重に鞘を…

第1章 10話

―旅立ち― ベランダに出ると見慣れた先客がいた。いつもここでお酒を飲むワターゲンさん。顔をリンゴのように赤く熟して分かりやすく酔っているが、身なりは小洒落た旅人だ。息の匂いは別として、ハイラル各地の情報を教えてくれる存在はとてもありがたい。民…

第1章 11話

―雪よけの羽飾り― AM8:00 門を出た両端、赤い炎が灯された燭台を抜け、村人や旅人たちが往来してきた道を下っていく。そのゆったりとした時間の中で、“旅立ち”についての決まり事を今一度思い出していた。 “旅立ち”とは。ハイラル王国の姫と元近衛騎士の勇者…

第1章 12話

―首刈り刀の執行者― AM9:45 「←ハテノ村 ハテノ馬術訓練場跡→」と書かれた看板の奥の木に、目印になりそうなほど分かりやすく垂れ下がっているガンバリバチの巣。ごめんなさい、と先に謝ってから奪取すると、案の定ガンバリバチが激怒して追いかけてきた。が…

第1章 13話

―戦う者が居た証― 林を進んでいくと、ハテノ砦を仰ぎ見ている旅人がいた。緑の髪を丸刈りにした、全体的に緑色の装い。周りの自然と同化してしまっている。 「このアングルもいい!」 独り言が聞こえてきた。隣に並び立って一緒に眺めてみる。うんうん。確か…

第1章 14話

―馬馬馬馬飯馬馬― 野生馬を探しに行く前にまだ何かしら事前情報が欲しく、辺りをうろついていると、馬小屋前で2人の青年が馬の世話をしていた。「ブヒ〜ン……だよ」「ヒヒ〜ン……だよ」と癖の強い独り言を発しながら作業している。すると、私の気配に気づいた…

第1章 15話

―オッキデンス・ステイヤー― PM9:00 しゃがんで移動し続けたせいでどっと疲れた私は、野生馬を登録することさえも上手くできなかった。カウンターに行って話をしなければいけないのだが、このお馬さん、なかなか行ってくれない。初対面だとしても嫌われすぎ…

第1章 16話

―ゴーゴー薬と瞳の青― 自由気ままに歩いているコッコを横目に見ながら、その先の料理鍋で夕ご飯を作ろうと頭の中のレシピ本を捲る。すると、奥の荷物置き場にリンゴが3個ほど置いてあるのが見えた。美味しそうだなぁと真っ赤に熟したそれを手に取ると、女の…

第1章 17話

―雲出づる双子山― 落ち着いた色の鞍に乗り、慣れない手つきで手綱を握る。踵で軽く合図するとヒグレが前進してくれた。馬体を撫でてありがとうを伝える。しばらく乗っていると少しずつ余裕が出てきて、かろうじて景色を見渡せるようになった。視点が高いと別…

第1章 18話

―ハイラルの大地― PM2:00 双子山の塔の中央には、前に師匠が嵌めたのであろうシーカーストーンの台座があった。ここから周辺のマップを読み込んだらしい。名前は勇導石といい、ハテノ古代研究所にも同じようなものがあった。その用途はまた異なり、シーカー…

第1章 19話

―廃墟は美しくも哀しい― PM12:00 蒼天の頂上、太陽が麗らかに地上を照らしている。完全に寝過ぎたなぁ、と煌々たる光に目を細めつつ、たき火でこんがり炙った焼きリンゴを食べた。香ばしい甘さを咀嚼して、傍らのフレッシュミルクを流し込む。食べ終わった後…

第1章 20話

―風斬り刀の執行者― PM4:05 前方の崖にはみ出すように見えてきた、闘技場跡地。円形の建物の中には、師匠のように英俊な者でないと太刀打ちのできない魔物たちが大勢蔓延っているらしい。ハイラル図鑑の魔物の項目を思い出していると、「旅の方!」と木の下…

第1章 プルアの日記

古代技術アイテム 「ブーストエイジ」 試行日記 絶対見ちゃダメ! by プルア ◉月×日 ガノン討伐を果たしてから12年が経った 年齢を進めるためのアイテム 「ブーストエイジ」のβ版は完成しているものの まだ起動できていない だってアタシ自身が成長しちゃ…

第2章 21話

―冒険日記の続きに過ぎない― Adventure diary。 表紙にはそう刻まれており、ページを流していくと“旅立ち”で得た経験を記録した冒険日記だということが分かる。「それがあわよくば時を越えて他の人の手に渡り、繋がる冒険の続きを書いてくれる人がいればいい…

第2章 22話

―オリエンス・マイラー― PM1:25 「そこの旅人! 私の話を聞いていきたまえ!」 馬の扱いに少しだけ慣れてきた雨の中、こちらに話しかける黒髪の男。そっと逸れようとしたものの、馬が逆方向に舵を切ってしまう。 「何、すか」 仕方なく見下ろせば細い目がこ…

第2章 23話

―ゲルドキャニオン邂逅事件― AM5:00 「準備は万端か?」 ふつうのベッドから起床した後ヒノボリに乗れば、ウドーさんが見送りに来てくれる。 「はい。おかげで万全っすよ」 腰の矢筒に充実した矢を一瞥すると、唐突に何かを差し出されて。透明なビン、濃い緑…

第2章 24話

―太陽の守護者― AM10:50 ゲルドキャニオン馬宿に入り、椅子に座ってアオタさんを見上げるが、向かいに腰を掛けることはせず。つぶらな瞳をこちらに向けて、柔らかく微笑んだかと思えば真剣な顔をされて。 「ミヅキはイーガ団のアジト、その牢屋にいる」 固い…

第2章 25話

―ドレスアップワンズマインド― 池沿いを歩いて一人ずつに話しかけたが、どの露天商や旅人に聞いても、分からない、ゲルドの街で聞け、ヴォーイでは入れないか、の繰り返しだった。暗い顔をした一部のハイリア人たちは、結局潜入方法はわからずじまいだった、…